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ささやかな至福のひと時を発見す

***空には薄い雲がかかり、燦燦と照り付ける太陽の下、ベンチに座ってコヒーをいただく***

妄想~目の前には、さえぎる物はない広々とした大地が一望できる、唯一の物音は近くの樹の枝にとまる鳥のかすかさえずりだけ、横のテーブルにはいつもの女が先ほど持ってきてくれたコヒー。ちょっと手を伸ばしコヒーに舌鼓をうつ。まぶしく光る太陽のもと、これまで忙しく、余裕のなかった時間を振り返る。

現実~目の前は、まばらになった葉っぱが目立つ垣根、足元の芝は冬枯れしている。ず~と昔、子供たちが小さいころキャンプ用に買ったアルミフレームの日焼けしたベンチに老いた体をあずける。まぶしさを軽減するために度付きのサングラスをかけ、最近増えてきた白髪あたまにAdidasのキャップ帽をちょこんと載せて日よけ替わりにする。体を左にひねるとそこにはエアコンの室外機、その上に先ほど女房が持ってきてくれたコヒーとチョコレートがお盆に乗っている。おもむろにコヒーカップを手に取り一口味わいながら、チョコレートをほおばる。苦い!カカオ80%。

コロナ禍、先ほどテレビを掛けると緊急事態宣言解除後のGotoトラベルについてMC、コメンテータ、そしてタレントが適当なことを言い争っていた。ワクチンは4月12日から高齢者に接種されるとか、しかし各自治体からは情報が少ないとクレームばかり。世の中、クレームを言えば、何とかなると思っている輩が多くてうんざりだ。自分はといえば、持て余した時間を海外のテレビドラマ(アメリカ、中国、韓国の字幕付き)を同時かオンデマンドで見たり、夕方には散歩もかねてリュックを担いで食料品の買い出しに出かける日々。メールにはちょっと頭にくる言葉、スルーしたいが、ムカッと来る情けない自分がいる。

そんな時、庭に出て妄想にふけっていると、しばらく味わえていなかったひとときの至福の時間、空間にいる自分を発見したのでした。